ADHDとは
ADHD(注意欠陥・多動性障害)は発達障害の一種であり、不注意、多動性、衝動性によって、職場や学校、家庭における日常生活に支障をきたす疾患です。本来は子どもによく見られる障害なのですが、最近は大人にも少なからず見られるようになっています。
このADHDの主な原因として挙げられているのが、脳の構造や機能に関する問題です。実行機能(自分の注意や行動をコントロールする脳の働き)や、脳内神経伝達物質(脳内の神経細胞の間で情報をやりとりする物質)の働きに障害が起きているとする説が知られていますが、詳しい原因については、現在のところまだ完全には解明されていません。
大人のADHDとは
大人のADHDは、大人になってから初めて症状が現れたというわけではありません。子どもの頃から、不注意、多動性、衝動性という3つの症状にずっと悩まされ、多くの方は自分なりの工夫や対策を考えて努力してきているのですが、それにもかかわらず状況が改善しないまま大人になり、うまく生活することができないまま、今日に至っているという状況です。
よく見られるのが、注意の持続が困難なこと、細部に注意が払えないため、仕事や家庭(家事など)でのケアレスミスや物忘れが多くなるなどです。また、約束の時間に遅れる、約束そのものを忘れる、締め切りに間に合わせられない、などの症状も見受けられます。
うつ病や不安障害になる事も
子どものADHDで見られる、著しい多動性や衝動性こそ目立たなくなりますが、待たされた時などにイライラして落ち着かない、人の話を最後まで聞くことができず、遮ってまで一方的に話をしたりするといったことが態度となって現れたりします。
本人の人間性や知能などに問題は無いのに、社会適応性に乏しく、人間関係の形成が困難になるのがADHDの大人の特徴です。そのため本人も悩みがちになり、やがて自尊心が低下し、うつ病や不安障害になるケースも少なくありません。
ADHDの主な症状
不注意(気が散ってしまう)
- 会議や仕事(授業や勉強)に集中できない
- 仕事(課題)でケアレスミスが多い
- 忘れ物、紛失が多い
- 約束の時間にいつも遅れる、約束を守れない
- 部屋が片付けられない など
多動性(じっとしていられない)
- 会議中や仕事中(授業中や勉強中)に落ち着かず、そわそわする
- 貧乏ゆすりなど、体を動かす癖がやめられない
- 一度話し出すと、なかなか止められない
- 自分のことばかりを話してしまう
- おしゃべりに夢中になり、家事を忘れてしまう など
衝動性(思いついたら唐突に行動に移してしまう)
- 会議中(授業中)に不用意な発言をしてしまう
- 相談せずに、独断で重要なことを決めてしまう
- 衝動的に人を傷つけるようなことを言ってしまう
- よく衝動買いをしてしまう など
当院での治療について
診断に関しては、ASRS(成人期のADHDの自己記入式症状チェックリスト)やCAARS(コナーズ成人ADHD評価スケール)を用いて、正確に行い、治療に役立てます。
ADHDの治療は、環境調整などの心理社会的治療から始めていきますが、適切な薬物療法を組み合わせていきます。薬物療法としては、アトモキセチンとメチルフェニデートといった薬が主に使われます。いずれも、脳内神経伝達物質であるノルアドレナリンやドーパミンが不足しているために生ずる病態を改善する作用があります。また最近、脳内のシグナル伝達系に作用し症状を安定化させるグアンファシンという薬剤が処方できるようになっています。