パニック障害
何の前触れもなく、ある日突然、息苦しくなり、めまいや動悸などに襲われる「パニック発作」を起こし、そのことで日常生活に支障をきたしてしまうのがパニック障害です。
パニック発作が起きた際の不安と恐怖は、絶望を感じるようなもので、「死に至るのでは」と思うほどの激しい発作に見舞われることもあります。そのため、場合によっては救急車で医療機関に運ばれることもあります。ただ、その発作というのは大体20~30分、長くても1時間以内には消え、心電図や血液検査などをしても異常は認められません。このように身体的な異常が見当たらないのに発作を繰り返してしまうのです。
なおパニック障害の症状というのは、過換気症候群や甲状腺疾患、不整脈などでもみられますので、それらの疾患と見分ける必要もありますので、発作が現れる方は速やかにご相談ください。ちなみに早期に治療を行えば、この疾患は完治の望める病気でもあります。
こんな症状がある方はご相談ください(例)
- 胸がドキドキする
- 息が苦しい
- 息がつまる
- 冷汗をかく
- 手足の震え、しびれ、顔の震えが生じる
- 胸の痛みや不快感をもよおす
- めまい、ふらつき、気が遠くなるような感じがする
- 自分が自分でないような感じがする
- 寒気、またはほてりを感じる
- 発作による突然の死の恐怖に見舞われる
悪循環を形成する三大症状
パニック障害は主に3つの症状からなり、これらが悪循環となってパニック障害を悪化させます。その3大症状のひとつが「パニック発作」です。そして、発作を繰り返すうちに、発作に対する強い恐怖感や不安感が生まれます。
これが2つ目の「予期不安」です。予期不安は、逃げ場の無いような場所で症状が起きたらどうしよう、発作を他人や大勢の人に見られたら恥ずかしい、といった不安や恐怖を生み、大勢の人が集まる場所などを避けるようになります。これが3つ目の「広場恐怖(外出恐怖)」となるのです。
パニック障害が悪化すると、行動半径が狭まったり、人前に出るのを嫌って閉じこもるようになったりしますので、通常の社会生活を送るのが困難になります。また、うつ病を併発するケースもあります。
当院での治療について
発症の原因は、まだ定かではありませんが、脳のある部分を中心に、神経伝達物質のアンバランスが生じやすい体質的な要因が基礎にあるのではないかと考えられています。また心理的な葛藤を抱えやすい性格傾向が影響する場合もあります。それらがベースとなって、寝不足や疲労、カフェインのとり過ぎや脱水などの心身のストレス、 あるいは心理社会的な悩み事などが引き金となって、発症するケースも少なくありません。
なおパニック障害に対する治療の基本は、抗不安薬や抗うつ薬のSSRIによる薬物療法です。お薬については個々の患者様の病態に合わせて、それぞれにふさわしい薬を処方します。
また、不適切な考え方や行動を修正していく認知行動療法や簡易型森田療法、心身をリラックスさせる方法を身につける自律訓練法などの精神療法が併用されることもあります。患者様にはこのような治療を組み合わせることで、少しずつ行動範囲を広げていくようにします。
社会不安障害
社会不安障害とは
注目を集めることや人から見られることなどに恐怖を感じ、また恥をかきそうな場面を恐れるあまり、人前で行動する際は過剰に緊張し、苦痛を覚えるという方もいるかと思われます。
このような非常に強い緊張を感じるだけでなく、さらに動悸、手足のふるえ、吐きけ、発汗、息苦しさなどの症状が現れることで人前に出ることを極端に避け、日常生活に支障をきたすようになると、それは社会不安障害という心の疾患であり、治療を行う必要があります。
なお社会不安障害は、不安や恐怖、緊張を感じる状況が1つに限定されている「限局型」と、ほとんど の状況で感じる「全般型」の2つの型に大きく分けられます。全般型は発症年齢が早く、重症の場合が多いといわれています。
このような症状がある方はご相談ください(例)
【人前で】
- 異常に緊張する
- 手足、全身、声の震えが出る
- 顔が赤くほてる
- 脈が速くなり、息苦しくなる
- いつもよりたくさんの汗をかく
- 繰り返し吐き気がする
- 口がカラカラに渇く
- トイレが近くなる、または尿が出なくなる
- めまいがする など
原因について
この疾患が発症する原因はまだ特定されていませんが、恐怖症状を抑える働きのある神経伝達物質であるセロトニンが不足してしまうことが要因ではないかと考えられています。
このセロトニンが不足する要因としては、過去に人前で恥ずかしい経験をしたことがあるなどの経験的要因、他人の目を気にし過ぎる、あるいは人見知りなどの性格的要因、また遺伝的要因などが挙げられています。
さらにドーパミンと呼ばれる神経伝達物質が不足することもセロトニンと同様に不安を誘発するのではないかと言われています。そのため、神経伝達機能が正常に作用することができれば、不安状態は発生しにくくなると考えられています。
当院での治療について
まずは、LSAS-Jなどの心理検査を用いて、SAD(社会不安障害)の診断を確実にいたします。
薬物療法では抗うつ薬のSSRIを主に用います。効果が現れるまでには個人差がありますが、約2週間から8週間ほどで症状が次第に緩和されます。症状が改善しても、再発を予防するためにしばらくは薬物治療を継続するようにします。認知行動療法では、不安や恐怖にとらわれている思考パターンを変えたり、緊張感をやわらげたりすることで、 回避行動を軽減する精神療法を行います。